「会社を譲受る(引継ぐ)手順」の基本的なイベントは
「会社を譲渡する手順」と同じですが、対応内容およびタイミングは、
反対側の立場である点、および譲渡提案があってから具体的な対応が始まる点で異なっています。
初期相談の概要
- M&Aで会社の買収を検討されているオーナー経営者と弊社担当者による面談
- 弊社担当者との面談で、M&Aの概要を知ること、買収のメリットを理解し、目的を明確にするとともに、対象業種や地域などの希望を定める
- 弊社の場合、初期相談は無料(弊社担当者の交通費も無料)
- 弊社担当者がご希望の場所に出向いて相談対応を行うが、取引信用金庫の営業店の応接室等で行うことが多い
- 信用金庫取引先企業であって、対象業種や地域の希望が明らかである場合には、弊社担当者との面談は行わず、相談窓口となった信用金庫から弊社宛に、買収希望の登録を行うのみとすることもある
- 買収希望の登録を行う手数料は無料
- 登録後、即時に対象企業紹介があることは稀であり、希望に合致する企業が現れるまで数か月から数年かかることもある(全ては縁)
- 対象企業紹介は、最初の段階では譲渡希望企業が特定されないようにした極めて簡略な「ノンネームシート」を用いて行われる
- 前向きに検討する意思表明があった場合には、弊社との間で「秘密保持契約」を締結して、より詳細なデータを「企業概要書」として開示することになる
ワンポイント・アドバイス:紹介があったとき即時に検討できる準備をしておく
- 「ノンネームシート」による譲渡希望企業についての紹介は、業種および地域などについて同様の希望を登録している先に同時並行的に行うことから、即時に検討できるように準備しておく必要がある
- 次の段階に進む意思を表明した先から、他の全ての提案先の返答は待たずに話を進めることから、迅速な検討・判断が不可欠
- 話が具現化すると、買収資金の手当てや、譲受先企業に常駐する要員の確保など、待った無しの状況が到来する
仲介契約(アドバイザリー契約)締結の概要
- 弊社がM&A仲介業務を受託する際に締結する契約
- 譲受の場合、正式に仲介に係るアドバイザリーを委託するこの段階で手数料が発生する。この手数料は、手続を進める役務に見合うもの(手数料の大半は、最終契約段階で成功報酬として発生)
- 譲渡希望企業に係る詳細情報が提供され、具体的に検討することが可能となる
ワンポイント・アドバイス:書類上の検討などはこの段階で済ませる
- 譲受る(引継ぐ)かどうかの書類ベースでの判断材料は概ねこの段階で提供されることから、必要な検討はこの段階で済ませるようにする
- 次の段階である「トップ面談(譲渡希望企業経営者との面談)」は、条件交渉の場ではないことから、条件に関する必要な調整もこの段階で済ませるようにする
トップ面談の概要
- 譲渡希望企業のトップと譲受希望企業のトップによる面談
- 互いに事業内容や意向を判り合った段階で実施する
- まさしく『お見合い』そのもので、信頼できる相手かどうかを見極める。「百聞は一見に如かず」。経営者の人柄で企業文化・組織風土がわかる
- 誠実に経営をしてきたか?どのような考え方で自企業を育ててきたか?などを判断することが最大のポイント
- どうしても納得できないのなら、後から断ればよいだけであることから、「相手の気持ち・立場を尊重すること」「心地よい場の雰囲気を作ること」などが必要
ワンポイント・アドバイス:「事前の認識を再確認」や「相互理解を深めること」が目的
- 条件交渉の場ではない。条件交渉などは仲介機関の調整に任せることが得策
- トップ面談後に話を進めることになれば、双方の協力が不可欠となるため、何度も顔を合わせることになる
- 良好な関係を作るための初日であると肝に銘じるべき
基本合意の概要
- 譲渡希望企業経営者と譲受候補企業経営者がともに協力してM&Aを完了させることを約する契約
- 「よっぽどのことがない限り後戻りはしない」と決意した段階で締結する
- 他に候補企業がいても、契約締結により「独占交渉権」が生じる。結婚にたとえるなら『婚約』
- 「いつ」「いくらで」「どのように」譲渡するかを明記する。通例明記される項目は次のとおり譲渡方法(株式譲渡、事業譲渡など)、譲渡金額、譲渡時期、役員・従業員等の処遇、独占交渉権、秘密保持、買収監査(およびそれへの協力)、解除条件、有効期限
- 定型フォームもあるが、交渉の結果は極力具体的に盛り込むことが得策
ワンポイント・アドバイス:よっぽどのことがない限り最終契約へと進む
- 気になる事項等については、基本合意前に事前に確認・協議・合意しておくこと
買収監査の概要
- 譲受希望企業側による、書類および実地の調査
- ここまでは譲渡企業の提供する資料・情報が正しいことを前提に話を進め条件を決めてきたが、買収監査では提供されてきた資料・情報に間違いがないか等を譲受企業が調べる
- 買収監査により判明した事実で、譲渡価格や諸条件の前提が崩れたり、破談になったりすることもある
- 実際には譲受企業側の責任者と、譲受企業側が依頼した公認会計士等とで行う(公認会計士等の費用は譲受企業負担)
- 実地調査は3日間程度で秘密裏に行われ、1~2週間程度で公認会計士等から譲受企業に監査報告書が提出される
- 監査範囲は、登記、現物、会計、財務、税務、人事、労務、各種契約書、許認可、株主総会議事録・取締役会議事録、株主状況、システム、諸リスク(法務、製造物責任、環境問題…)など全てにわたる
ワンポイント・アドバイス:調べようとするときりがないため、必要・十分を見極めて依頼する
- 調べる範囲・深さと所要期間・コストは比例関係にあるため、一般的に行われている水準の扱いをベースとして譲受側が必要と思われるものを追加するのが一般的
最終契約の概要
- 譲渡企業株主と譲受企業との間で締結する株式(もしくは事業)の譲渡契約
- 買収監査の結果を踏まえ、最終的な条件の調整が済めば最終契約に至る
- まさしく『結婚式』
- 通常は次のように行われる
- 契約締結
- 株券、その他重要物・重要書類等(権利書、通帳、印鑑、各種議事録・・・)の確認
- 代金振込
- 振込確認
- 株券、その他重要物・重要書類等(権利書、通帳、印鑑、各種議事録・・・)の引き渡し
- 挨拶、記念撮影など
- 出席者は譲渡側、譲受側、仲介機関のほか司法書士が同席することがほとんどである。取引金融機関などの他の関係者が同席することもある
ワンポイント・アドバイス:買収監査後、最終契約調印式までに準備することは多い
- 資金手当て、振込先口座確認、必要な登記事項の確認および書類準備、社員・取引先等への情報開示準備、ニュースリリース準備など事前にやるべきことは多い
(簿外債務などのリスクを担保するため、売買代金の2割程度の譲渡側定期預金を作り、買収側が半年程度、そこに質権設定をしておくこともある)
社内・社外への情報開示(ディスクローズ)
- 社内・社外へのM&Aに関する情報開示
- 中小企業の場合「社長についてきた」という意識の従業員が多い。「捨てられた」「乗っ取り屋が来た」と誤解して主力の従業員が退職したり、関係がギクシャクしてしまっては何にもならない
- 譲渡・引退後の元社長が、プライベートでは後々までにこやかに挨拶できるような関係を作ることが理想
- 幹部社員、取引金融機関、取引先にはタイミングとやり方を熟慮
- 円滑な引継ぎ
- 新旧社長が揃って関係先に挨拶。その他もあらゆる点で協力を惜しみなくする。大切であることは「買収後の順調な業務継続」であることを忘れずに
- 誰が新社長になるかは様々なパターンがあるが、旧社長が代表権の無い会長、顧問、相談役などとして半年から1年程度残ることも多い
買収後の会社の事業展開
- M&Aが完了しても終わったと思ってはならない。M&Aの成果を上げるのはこれから
- 譲渡後の会社の事業展開・業容拡大に惜しみなく努力し、「買収されたおかげで大きく成長できた」と関係者一同が感じられるようにすることが肝要
ここまでM&Aにおける買収手順について解説してきました。以下では、譲渡側の手順を解説しています。、譲渡をお考えの方はこちらのページをご覧ください。
◆ M&Aでの譲渡手順