M&A成約インタビュー

商店街で老舗精肉店を営む夫婦の選択
~第三者への承継は「自分の子どもに譲るんだ。」という気持ちで~

【写真】
(左)譲受企業:㈲たかどや牧場・宮崎吉弘様
(中央)譲渡企業:㈲丸山食品・丸山光夫様
(右)譲渡企業:㈲丸山食品・丸山安子様

譲渡企業
有限会社丸山食品
業種
精肉業
所在地
長野県飯田市
譲渡理由
後継者不在
譲受企業
有限会社たかどや牧場
業種
畜産業
所在地
長野県飯田市
買収理由
事業拡大

宮崎氏・丸山夫妻に
インタビュー

㈲丸山食品は、創業約70年の老舗精肉店「肉のまるやま」を経営しており、店頭販売のほか、飲食店・ホテル・学校・病院など、地域の方々に安心安全のお肉を届けています。
同社の代表取締役を務めていた丸山光夫氏は、後継者不在を背景に、畜産業を主として精肉業や飲食業などを展開している㈲たかどや牧場に事業を託しました。
今回、本件M&Aについて、㈲丸山食品の丸山光夫氏・丸山安子氏、㈲たかどや牧場の宮崎吉弘氏にお話をお伺いしました。

丸山食品様の創業の経緯について教えてください

(丸山安子様)
丸山食品は、私の父が約70年前に創業しました。元々、東京の板橋で呉服屋を営んでいたのですが、私が2歳くらいの頃に東京で空襲があったので、父の生まれ故郷である長野県飯田市に疎開してきました。疎開して数年は仕事が無かったのですが、自宅の前にあった肉屋さんが店を閉めることになって、そこで父が「自分もやってみるか。」ということで、見様見真似で始めたのが「肉のまるやま」です。

当時は問屋などありませんでしたので、近所の肉屋さんと一緒に農家から豚一頭を仕入れて、それを分け合っていました。全くの素人である父が捌き、氷で冷やした木製冷蔵庫に入れて販売していましたね。昔は今と違って、お客さんのお肉に対する関心が薄く、多少硬くても許された時代でした。

光夫様が会社を引き継いだ経緯について教えてください

(丸山安子様)
主人の父は大下条(現在の長野県下伊那郡阿南町)に住んでいたのですが、実はよくうちの店に買いに来てくれた常連さんです。私の父とも親しくなって、時に家に泊まっていったりすることもありました。 

(丸山光夫様)
私は当時、高校を出て精密機器メーカーに勤めていました。しかし、父がこの店に通ううちに、「肉屋は将来性のある良い商売だ。」と考えるようになり、私が婿養子として丸山食品を引き継ぐことになったのです。ちょうど、36災害(昭和36年の豪雨災害)の頃でしたね。それから約60年間、妻と2人で切り盛りしてここまでやってきました。

会社を譲渡しようと思ったきっかけについて教えてください

(丸山光夫様)
私には後継者がいなかったのですが、3年ほど前に私が病気を患ってしまったことがきっかけです。従業員やその家族もいますし、常連客も多いので、何とか店を残したいと考え、「事業承継について真剣に考えねばならん!!」と思ったのです。
そこで、様々な事業承継セミナーに参加してみましたが、なかなか具体的に進めずにおりました。そこで飯田信用金庫さんの渉外担当Nさんにも相談してみたのです。すると、Nさんから「当金庫も事業承継セミナーを開催するので、ぜひご参加ください。」とお声がけいただいたので、「信金さんのセミナーか。どんなものかな。」と参加してみたのです。そこで信金キャピタルさんも知りました。
セミナー後の個別相談会にも参加したのですが、「今後進めていくにはいくらかお金がかかります。」と言われましてね。それまで参加してきたセミナーでは、そういった話はなかったので決断できずにいましたが、お金がかかるなら真剣に取り組んでくれるのではないかと思ったわけです。このような経緯で、飯田信用金庫さんと信金キャピタルさんに、M&Aの支援を依頼しました。

事業拡大を考えたきっかけについて教えてください

(宮崎吉弘様)
まず、弊社の沿革について、簡単にお話します。私は、父が肉用牛の肥育経営をやっていた関係で、畜産の勉強をするために鹿児島の高校に進学しました。卒業後、生産から飲食までを一貫して行っている京都の老舗すきやき屋で、肉の解体や捌きを学んだ後、飯田市に戻りました。その2、3年後に、BSE問題が起きて、弊社も影響を受けてしまいました。市場では牛の価値が10分の1くらいに下がりましてね。これはまずいなと思い、スライサーを仕入れて、知ってる人たちに買ってもらうなどして何とか凌ぎました。これをきっかけに、たかどや牧場を設立し、これまで事業をやってきました。

弊社では現在、畜産から精肉、飲食まで手掛けていますが、最近は仕事がパンパンになってしまい、製造を外部の工場に委託していたんです。しかし、1か月半くらい待つという状態が続いていたので、これなら自分でやった方がいいなと思いましてね。事業自体も順調に伸びていましたので、更なる拡大に向けて良いサイクルを生み出すためにも、自社に取り込んでしまおうという狙いです。実際、加工賃などを考えると、内製化した方が利益率は上がるし、自分の好きなタイミングで作れますからね。

初めてお会いした時のお互いの印象を教えてください。

(丸山光夫様)
初めにお会いしたのは、飯田信用金庫さんの本部で行ったトップ面談の時ですね。同業でしたが、面識はなかったです。
宮崎さんの第一印象ですが、体格が良いなと思いましたね。また、牛を300頭飼っていると聞いて、その規模なら安心して託せるなとも思いました。飯田市でもトップクラスの規模ですからね。

(宮崎吉弘様)
飯田信用金庫さんの本部担当Sさんから、光夫さんが非常に良い人柄だと聞いていました。また、私の同級生に光夫さんの御親戚がいて、その人に聞いても良い人柄だとおっしゃっていました。身内が言うのですから、本当に良い方なんだろうなと。普通、身内に対しては言わないですよね。実際に光夫さんに会ってみて、本当に良い方だと確信しましたね。

たかどや牧場様の今後の事業展開について教えてください。

(宮崎吉弘様)
「肉のまるやま」は、長い歴史があり、地元の方々に信頼されているお店ですから、まずはこのお店を末永く残したいと考えています。先日、光夫さんと一緒に取引先へ挨拶回りに行ったのですが、皆さん、光夫さんのことを良い方だと仰っていて、本当に信頼されているのだと感じました。ですから、その信頼を裏切らないようにしたいと思います。

年末の繁忙期ということもあり、まだ引き継ぎができていませんが、ゆくゆくは、弊社の従業員を派遣したいと思います。また、最終的には、自分の牧場で育てた牛を「肉のまるやま」で販売したいと思っています。

今回事業を引き継いだ理由の一つは、365日手間暇かけて育てた牛が、他社に任せると、みすみす安く売られてしまうことがあったからです。どうしても寂しい気持ちがありましてね。今も、直売所や直営店を持っていますが、今後は「肉のまるやま」の販売網を活かして、自分で値付けをして売りたいと考えています。

同じ立場の経営者の方々へアドバイスをお願いします

(丸山光夫様)
後継者がいない場合は、第三者に譲るという選択が出てくるわけですが、その相手を自分の後継者だと思って接することが大事だと思います。営業権がいくらかという生々しい話もありますが、そのようなことを相手に対して希望どおりぶつけてしまっては、話がまとまらず前に進まなくなってしまうと思います。

第三者に会社を引き継いでもらうことを決めたのであれば、「自分の子どもに譲るんだ。」という気持ちになることが重要ではないでしょうか。

(宮崎吉弘様)
私には、娘が2人いるのですが、今は2人とも事業に携わってくれています。しかし、後を継いでくれるかどうかは娘のパートナー次第ですからね。将来、もし自分が会社を譲らなければならない立場になった時に、今回のM&Aの経験が活きてくるのではないかと思います。もちろん、抵抗はあるでしょうけど、やはり光夫さんのように、相手が誰であろうと快く事業を託さなければならないなと感じます。なるべく口出ししないようにね。

事業を拡大するために会社を買収するということは、正直なところその気になればできることだと思います。将来、自分自身が会社を譲らなければならない場面が訪れるということを想定して、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

担当コンサルタントからのコメント

丸山前社長は、個別相談会で初めてお会いした時から、ご自身のことよりも従業員の方々の体調や働き方、取引先のことを気にかけておられたことが強く印象に残っています。今回、丸山前社長の従業員や取引先に対する想いを汲んでくれるお相手に会社を譲渡できたこと、そして、地域に愛される「肉のまるやま」が存続することを大変嬉しく思います。
今回のM&Aのように、これからも多くの経営者様の想いを繋いでいきたいと思います。

信用金庫担当者からのコメント

今回のM&A実施後、店頭で新社長と前社長のお二人がお客様と談笑する姿を拝見した際に、前社長の想いが引き継がれ、「肉のまるやま」が今までと変わらず存続していることを実感することができ、大変嬉しく感じております。
今後も多くの経営者様の想いを繋げられるように、お取引先の事業承継のご支援に力を入れて参ります。